3つのタイプの自己表現

非主張的(ノンアサーティブ)な表現

相手は大切にするが、自分を大切にしない自己表現である。

自分の考えや気持ちを言わない、言い損なう、遠回しに言う、言い訳がましく言う、言っても相手に伝わるように言っていないなどによって、自分の思いや言い分が相手に理解されない状態である。

自分の主張を控えて相手の思いを優先し、ことを円満に収めるつもりかもしれないが、自分の思いを相手に伝えてはいないため、譲ったことは理解されない。たとえば、上司に意見を言うと否定されると思っている部下が、黙って従っているような場合であり、上司はそれで問題はない、賛同されたと思い込む状態である。

非主張的な表現が多い人は、遠慮や配慮によって人間関係のもめ事を回避し、場の安定の責任を一人で背負ってしまうので、その負担、忍耐は大きなストレスになることもある。

逆に、自分を伝えられず、理解されない欲求不満や押さえ込んだ怒りは、自分より弱いものに八つ当たりとして出たり、突然キレる言動になることもある。上司に叱責された人がその場では我慢して、部下に対して怒りの感情を見せ厳しく接するなどもこの例である。

非主張的な表現を続けると。自分をとことん追い込んだり、他者を理不尽に攻撃したりすることになりかねない。

非主張的表現の二つの心理的背景

個人の心理的傾向

自分の思いや 考えを表現することが相手に不愉快な思いをさせ、相手か ら嫌われる可能性や、相手と違った意見を言うことで起こ る葛藤やもめごとを避けようとする心理

そこに は、自分の考えや気持ちを表現することで起こるマイナス の結果を怖れ、相手に合わせることで安全を確保しようと する心の動きもある。

社会的・文化的影響

「……すべき」「……してはならない」といった習慣や常識に縛られて、実は自らの尊厳や権利を否定する言動をとっている状態。権威や経験をもつ人の 意見は立てないと不利になるとか、強い者、多数派に反対すると、阻害され、排除されるといった状況などが影響する場合もある。

自己表現へのためらいは、自分を否定・否認していくことにも なり、自発性や個性を発揮するチャンスも失うリスクがある。

 攻撃的(アグレッシブ)な自己表現

自分を大切にするが、相手を大切にしない自己 表現である。

自分の考えや気持ちを相手に伝え、自分の権 利は主張するが、その影響、相手の反応を無視、あるいは 軽視して、一方的に自分の言い分を通そうとする言動であ る。

部下の仕事の状況を無視して 仕事や残業・休日出勤を一方的に命じる上司などは攻撃的 自己表現をしている。上司からの仕事の依頼を理由なども聞かずに「忙しくてできません」とはねのけるように拒否するのも攻撃的な言動である。

また、たとえやさしく丁寧な語調で言ったとしても、自分の地位・立場を利用して、相手を従わせようとする言動も攻撃である。攻撃的とは、自分が優位に立ち、相手の欲求や気持ちを無視して自分の思い通りに動かそうとする意図が明らかな言動 をいう。

攻撃的表現の二つの心理的背景

個人の心理的傾向

自分の考えは正しい、優れているという思い込みや、 自分の言い分を絶対に通したい、相手に勝ちたいという欲 求がある人、あるいは自分の考えや気持ちが通らないこと に我慢できない人などがとりがちな傾向。その結果、他者の考えや気持ちに目が向かず、自分と異なった考えや気持ちは間違いであり、それが取るに足りないことに したい心理が働くや、他者を軽視したり無視したりして、攻撃的な反論を繰り返して自分の意向を通そうとする心理も働く。

社会的・文化的影響

部下は上司の 命令に背くべきではない、仕事のために個人的ニーズを我慢するのが当然、といった、ある社会や組織にのみ通 用する常識に従って動き、その攻撃性や人権無視を自覚しない場合である。そこには、権威、権力、地位、役割、年齢差、性差などを利用して、自分の欲求を通そうとする無意識の攻撃性が潜んでいる。

 アサーティブな自己表現

自分の考えや気持ちなどを明確に捉 え、それを正直に、率直に、相手に分かりやすく伝えてみ ようとすることである。

同時に、相手も同じように自己表現することを当然とし、相手の考え、気持ちを受け止め、 理解しようとする

相互尊重の精神と、相互理解を深めようという思いに裏づけられた自己表現である。

アサーティブな自己表現の2つの側面

「自分の表現」を大切にしようとすること

まず、自分の意見や感じを確かめる作業が必 要である。

他者に気をとられていたり、相手を優先させていたりすると、自分の意見や気持ちを確かめることは難しい。とりあえず、自分を確かめることに集中する時間をとる。そうすると、はっきりした気持ちや意見もあるが、曖味な考えや気持ち、悲しくもあり腹立たしくもありといっ た両面的な感情や迷い、困惑などがあることがわかるだろう。

アサーションでは明確なことだけを言葉に出して表現 すると受け取られやすいが、そうではない。確かめた思いは、なるべく正直に、自分の持ち合わせている語彙、表現 法を使って、そのまま言語化してみることが大切である。

「イエス」「ノー」がはっきりしていることもあるだろうが、「迷っている」とか「困っている」とか「うまく言え ない」といったことや、「行きたい気持ちと行きたくない気持ちの両方がある」と伝えることもあるだろう。それが、 正直な気持ち、率直な表現だからである。

「相手の表現」を大切にすること

自分の思いを相手はどう受け止めたか見届け、対応しよ う。相手にも自分の場合と同じように、相手の思いを確か め、表現するプロセスがある。それを待ち、聴くことで、 はじめてアサーティブなやり取りは成立する。それは相手 の存在を認め、相手を自分と同じように大切にしようとす る思いの表現でもある。

アサーティブな関わり、関係とは

自分の欲求や意見 をきちんと表現すれば通るとは限らないことを覚悟する

双方の意見や気持ちに相違がある場合は、葛藤が起こることもある。アサーションは、自分が率直に伝えると同様に相手からも率直な反応が あることを前提とするので、相手からは「イエス」も「ノ ー」も返ってくることを当然とする。そこでは葛藤が起こるだろうが、安易に妥協することも、一方的に自分の意見を通そうとすることもしない。

葛藤が起こったときは、互いの意見を出し合い、聴き合って、譲ったり譲られたりしながら、歩み寄りの道を探し、それぞれに納得のいく結論 を出そうとする過程を大切にする。

葛藤を引き受けることを覚悟する

違った人間が、違った思いや気持ちを持って生活する上 で、意見や提案が常に同じであることはない。むしろ日常 には大なり小なり葛藤が起こって当然であり、それを覚悟して葛藤を引き受けようとする気持ちとやり取りがアサーションである。

葛藤は違った視点や状況が見えていっことであり、それは物事の幅の広がりや可能性を示唆して もいる。対立は解決できないのではなく、アサーティブなやり取りは、相互の満足感を高め、人間関係を豊かにする。。

アサーティブな関わり・関係は、葛藤を引き受け、「自分に正直に話す」と「相手に聴く」の両方のやり取りによって互 いにいい刺激を出しあい、あたらな解決策や創造を生み出すプロセスでもある。

(平木編 「アサーショントレーニング」 2008, 至文堂 から抜粋し、一部改変・追加)

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